
Adobe PDF(Adobe Portable Document Format)は、OSや作成したアプリケーションソフトに依存せず、閲覧用のソフトが無償で配布されているなど、多くの利用者に利用されている電子文書フォーマットです。インターネットではすでに数多くのPDF文書が提供されています。
アドビ システムズ社は、2001年4月に発売を開始したAdobe® Acrobat® 5.0で、アクセシビリティ機能の強化をはかりました。Adobe Acrobat 5.0以前のバージョンでは、作成できるPDFの仕様や当時のスクリーンリーダー(点字ディスプレイを含む)の機能に制約があり、PDF文書の内容を読み取ることができず、視覚障害者にとってのアクセシビリティ上の問題がありました。これに対しアドビ システムズ社は、アクセス可能なPDF文書を作成するためのさまざまな機能や、利用者の身体特性に適した表示方式に変更するアクセシビリティ機能を提供することにより、この問題の改善に努力してきました。Adobe Acrobat 5.0のリリース後、日本国内の視覚障害者向けスクリーンリーダー各社が、相次いでPDF(バージョン1.4)への対応を行いました。これにより、現在では日本国内の主要なスクリーンリーダーで、一般的なPDF文書を読み上げることが可能となりました。2005年1月発売を開始した、Adobe Acrobat 7.0ではさらにアクセシビリティ機能を強化しています。また、多くの利用者の利用しやすさにも可能な限り配慮しています。アドビ システムズ社は、今後もより多くの環境において、アクセシビリティが確保されるよう努力を続けてまいります。
JISX8341-3(ウェブコンテンツのアクセシビリティ指針)では、Adobe PDF(Adobe Portable Document Format)のようなオブジェクト技術を用いる際は、アクセス可能なものにすることを求めています。
5.1.b)ウェブコンテンツには,アクセス可能なオブジェクトなどの技術を使うことが望ましい。
アドビ システムズ社では、より多くの利用者にPDF文書を利用していただける環境を提供するために、「Adobe Acrobat」および「Adobe Reader」に、アクセシビリティ機能を提供しています。本ドキュメントでは、PDF作成ソフト「Adobe Acrobat」を利用して、アクセス可能なPDF文書を作成する方法を解説します。本ドキュメントで示す作成方法および留意点に従ってPDF文書を作成することにより、多くの障害者からのアクセス(可読性)を確保することができます。なお、本ドキュメントで示す方法は、日本国内のすべての支援技術からの利用を保障するものではありません。しかし、本ドキュメントに従うことにで、最大限アクセシビリティに配慮したPDF文書を作成することができます。
JISX8341-3では、アクセス可能なウェブコンテンツの基本的要件として、視覚や聴覚の情報に頼らなくても操作・利用できること、特定の身体部位に依存しなくても操作・利用できること、などを挙げています(4.2 基本的要件)。PDF文書でも、これらと同様の要件を満たす必要があります。要件を満たす具体的な方法は、障害者のウェブ利用を支援する支援技術からも、提供するPDF文書が利用できるようにすることです。たとえば、視覚障害者はウェブのテキスト情報を音声に変換する音声ブラウザやスクリーンリーダーなどの支援技術を利用しています。アクセス可能なPDF文書とは、これら支援技術からの利用を妨げないものを指します。アクセス可能なPDF文書を作成するためには、製作者があらかじめアクセシビリティに留意して作成しなければなりません。Adobe AcrobatおよびAdobe Readerでは、支援技術からの利用を可能にするさまざまな機能が用意されています。また、支援技術がアクセス可能なPDF文書に対応していない場合でも、Adobe AcrobatまたはAdobe Reader自体にさまざまな利用者に適した表示方式に変更する補助機能があります(「4.2 Adobe Acrobat 7.0 / Adobe Reader 7.0の利用者向けアクセシビリティ機能の概要」を参照)。これらの機能を利用することにより、多様な利用者に配慮したPDF文書を提供できます。
Adobe Acrobatでは、「タグ付きPDF」という手法でアクセシビリティを実現します。タグとは、PDFで文書構造や代替情報を提供するために用意された要素です。JISX8341-3では、文書構造を規定すること(5.2.a)、画像など非テキスト要素には代替情報を提供すること(5.4.a、5.4.c、5.4.d)、が求められています。これらはHTMLに対する要件ですが、PDFでもタグを用いることによって同様に文書構造や画像への代替情報を提供することが可能になります。タグ付きPDFは、見た目にはタグの無いPDFと区別がつきません。しかし、タグを正確に付けることにより、音声読み上げ順序が正確になり、文書内の移動もしやすくなります。本ドキュメントでは、Adobe Acrobat 7.0 Professionalでタグ付きPDFを作成する方法を中心に紹介します。タグ付きPDFの詳細は、Adobe Acrobat 7.0のヘルプ「タグとアクセシビリティの関係について」を参照してください。